« 意思表示としての署名 | Main | ブログで拾った夫婦別姓の声 »

June 25, 2004

実は家族よりも優先されるものがある家族条項

 人権に関する憲法改正議論ではよく家族条項を耳にします。「家族を大事にする、保護する」というような条文や規定を盛り込むべきだというのです。

 たいていの人にとって家族は大切な存在です。なんとなく賛同したくなりますが、どうも信用なりません。憲法記念日に発表された読売新聞の憲法試案、または自民党憲法調査会の論点整理を見る限りでは家族よりも優先される「何か」が見え隠れするからです。

 その「何か」とは国家です。家族条項を強く求める人ほど、家族条項の主目的は家族のためではなく国家のためにあるようです。表向きは「家族の尊重」ですが、暗黙的に「国家の安泰のために」という前提があります。明確に本音を表明している発言を引用しましょう。

夫婦別姓が出てくるような日本になったということは大変情けないことで、家族が基本、家族を大切にして、家庭と家族を守っていくことが、この国を安泰に導いていくもとなんだということを、しっかりと憲法でも位置づけてもらわなければならない。(自民党森岡正宏衆議院議員、憲法調査会憲法改正プロジェクトチーム第9回会合より)

 ほらね。優先順位は国家が先で、家族が後。個人なんてきっと家族の後でしょう。家族を大切にすることは当然ですが、家族や個人よりも国家が優先されることが心配でなりません。

 個人を尊重しつつ互いの利害を調整し、共同体としての和を保つことが簡単ではないのは確かです。だから全体の和に都合の良い個人を求める人がでてくるのでしょう。しかしその発想は安易で横柄だと思います。個人が抑圧される社会になってしまうからです。

 家族条項を求める方々は「国家のために家族あり」と考えます。夫婦別姓を認めないことなど、その最たる証拠です。国の法律で定める家族に当てはまらない”自称”家族は保護するつもりなど微塵もないことでしょう。そうした排他的な考えこそ憂慮すべきです。

 しかし、どうだろうかと疑問が残ります。さすがに「国家のために家族を保護せよ」と本音を明らかにしてしまうのでは成立は困難でしょう。西川京子衆議院議員のように「人間の支えになるものの根底は家族」とか言いながら賛同者を増やすのでしょう。それで、家族保護を規定する家族条項ができたと仮定します。

 家族を保護することが憲法に明文化されたら、家族を保護する権利が生じるということになるのでは?(もちろん現行でも家族は保護されるとは思いますが)

 そうなると夫婦別姓が法制化されないということは、家族を保護する権利を奪われた状態だとも言えます。家族になりたくて婚姻届を出しても、氏を片方に決めなくては婚姻届は受理されません。国が家族を保護するといいながら家族を選別していることになります。それは家族になりたいカップルが家族を保護したい権利を国家が奪っていることになります。

 そうなると、憲法の家族条項に照らし合わせて夫婦別姓は認められるべきという理論が出てもおかしくないはず。そして違憲立法審査権が発動されることを期待してしまうのですが。楽観的すぎでしょうか。

 いやそもそも、夫婦別姓の法制化は法律論的には法制審答申で結論が出ていて、ただ立法化のプロセスで阻止されているだけなんですけどね。反対する人たちは法律的な裏付けよりもなによりも、夫婦別姓を求める人間が出現することこそが社会の安定を脅かすと思っているようです。

|

« 意思表示としての署名 | Main | ブログで拾った夫婦別姓の声 »

Comments

はじめてコメント&トラックバック差し上げます。
もんもんいと申します。

遅くなったコメントにて恐縮です。

この「憲法改正プロジェクトチームの論点整理(案)」、遅まきながら、読んではらわた煮えくり返りました(汗)。
そう、自分の文章を書いてて思ったのですが、家族、共同体、というと聞こえは良いですが、要は戦中の「向こう三軒両隣」、小学生の「班活動」みたいな、「管理しやすい単位」を作りたいだけ何じゃないでしょうか。
内縁関係でも、長く同居生活したことが証明されれば、生命保険の受取人になれるというこのご時世に、わざわざ心と心の繋がりを機械的に管理しようとするお上の感覚がわかりません、本当に。

いきなりのコメントで熱くなってしまいすみません(汗)。
私個人は、結婚の時敢えて改姓を選びましたが、夫婦の姓の選択の自由は、断然支持しています。
これからも、貴ブログ応援させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。

ところで余談ですが、テキストに「産経新聞」のことばがあるばっかりに、Googleの広告覧に「産経新聞購読のお申し込み」が出てしまうんですね。
泣かせます(涙)。

Posted by: もんもんい | July 05, 2004 at 10:49 PM

もんもんいさん、はじめまして。
憲法調査会は朝日新聞6月18日社説で気付きました。
http://www.asahi.com/paper/editorial20040618.html

でも私はその論点整理(案)のメールとやらは見ていないのですが(汗)

他にも、トラックバックしてくれたサイトの先に以下の関連記事がhttp://www.cs.kyoto-wu.ac.jp/~hirakawa/diary/archives/200406/300544.php

余談ですが「読売新聞」しか触れていない当記事でも、AdSenseでは「産経新聞」が出てきます。もしかしたら産経新聞は「新聞」というキーワードで契約しているのかもしれませんね。

Posted by: 夫婦別姓を待つ身 | July 06, 2004 at 08:33 AM

お返事ありがとうございます!
トラックバック先の記事、早速拝読してみましたが、鋭い指摘の数々(笑)、とても参考になりました。
#私もTB送ってしまいました...。

確かに、市民間の横の繋がりや国際的なネットワークを黙殺した「公共」なんてありえないことなど、ちょっと考えればすぐバレてしまいそうなものですが...。
夫婦別姓や事実婚などを始めとした、人間関係の多様性を大幅に制限された社会なんて、暮らしてて何の楽しみがあるんでしょう。「彼ら」はそれに気づいてるんですかね。

Posted by: もんもんい | July 06, 2004 at 06:34 PM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/24101/838435

Listed below are links to weblogs that reference 実は家族よりも優先されるものがある家族条項:

» THE BLUE HEARTS [一輪庵]
 いろいろ絡み合っての上なんだけど。  ひとつ、河原町のOPAのバーゲンに行って [Read More]

Tracked on June 30, 2004 at 01:28 AM

» 「両性の平等」を定めた憲法24条の改悪 [美大通教生活@ちゃぶ台内職編集屋]
えと、「今週の佐々木信也」とか(汗)「Borderline Cases」展のその後とか、先に書くべきことは大いにあるのは重々承知なのですが、取り急ぎカッと来てる... [Read More]

Tracked on July 05, 2004 at 10:30 PM

» 青い鳥コンプレックス [瀬戸智子の枕草子]
先日、このブログでも、ちょっと触れた 憲法24条の見直しについて、 あちこちのブ [Read More]

Tracked on July 08, 2004 at 02:00 PM

» 男女不平等目指す自民党 [SHOW'S DIARY]
東京新聞の社説を読んでいたら、とんでもないことを発見した。自民党は、憲法改正案について、次のような文言を入れているというのだ。 「婚姻・家族における両性平等の... [Read More]

Tracked on July 08, 2004 at 02:26 PM

» 脆弱者たちの悪あがき [Paisiblog = paisible + blog]
 自民党が、民主党を批判する文書を配布しているそうだが、その論拠が余りに情けなさすぎて興味深い。  民主党の政策のうち、文書の中で槍玉に挙げられているのが... [Read More]

Tracked on July 11, 2004 at 01:47 PM

» 憲法で両性の平等が揺らぐ? [毎日が日曜日blog]
1月16日の赤旗日曜版を見ていて、ギョッとした。うちでは、一時期、記事の比較のた... [Read More]

Tracked on January 18, 2005 at 12:20 AM

« 意思表示としての署名 | Main | ブログで拾った夫婦別姓の声 »